資金調達をマスマーケティングする時代へ

資金調達をマスマーケティングする時代へ

先日、僕が技術的な側面での支援を行っている Starbase のトークンセール(Crowdsale)が無事終了し、計10億円相当の資金を仮想通貨建てで調達することができました。

前回のブログ記事からだいぶ時間がたちましたが、それ以降も色々なことが有りました。
上場(ICO)が完了した頃にまた Starbase のトークンセールの顛末について書きたいと思っています。

今回は ICO のマーケティング事例について書きます。

資金調達のプロセスが不透明な時代

僕がサラリーマンだったころ、会社の資金調達というものは謎のベールに包まれた秘密裏に行われる商談というイメージでした。

毎週のように CEO や CFO がオフィスに来る VC(ベンチャーキャピタル) やエンジェル投資家をもてなしたり、社外に打ち合わせをしに行ったり。何を話しているのか検討も付きません。

社内 MTG で取締役が「投資家の為にデモアプリを作ろう」というようなことを話していましたが、一介の従業員である僕にはどんな投資家がいるのか知らされませんし、もちろん顔を見たことも有りません。そのプロセスは極めて不透明なものでした。
(念の為補足ですが、不透明であることが悪であるとは全く思っていません。オープンにすることが企業に不利益をもたらすことも多々有るでしょう)

一方、最近になって新しい資金調達の文化が生まれ、様々な業界で活用され始めています。

一対一 の資金調達から 一対多 の資金調達へ

僕の過去のブログ記事を読んで頂けた方はすでにご存知の通り、今、世界で ICO または Crowdsale(クラウドセール), TokenSale(トークンセール) と呼ばれる資金調達が急速に増えています。

直近6ヶ月で3000億円を超える調達が行われ、エンジェル&シードラウンドの資金調達額については、今年6月の時点ですでに VC からの調達額を超えているというデータも発表されています。

株式での調達と比較した ICO の違いは数多く有るのですが、 “クラウドファンディング” の性質を持っていることが最も大きいな違いだと考えています。

上記の画像の通り、多くの個人投資家に対してアプローチする必要が出てきます。
例えば 58億円 相当をトークンセールで集めた MobileGo の場合は世界の8000人超の投資家から調達しました。

エンジェルやVCからの調達とは全く違った考えが必要であるというのがお分かり頂けるかと思います。

このマスマーケティングの例として、先日「Blockchain Meetup Roadshow in Asia 2017」というイベントに参加しましたので、その模様について紹介したいと思います。

Blockchain Meetup Roadshow in Asia 2017


こちらのイベントは 11/18 に半蔵門の Lifull さんのオフィスで開かれました。
http://cloudico.tokyo/

会場に入るなり、多数の外国人が立ってネットワーキングしている様子が見られ、普通の日本人ミートアップとの違いを認識させられました。

この George Popescu というのが仕掛け人のようです。
本人自体も凄まじい経歴を持ちつつ、今回来日したプロジェクトのような ICO 案件のコンサルティングを手がけているようで、あの FirstBlood の ICO もサポートしたようです。
https://www.blockxbank.com/

アジア各国への行脚の目的は、各国の個人投資家へのプロモーションだと思われます。

機関投資家へのプレゼンではなく、普通の個人投資家へ向けてトークンセールへの出資を募るべく、ビジネスプランのピッチをするというのが非常に新しいと思いました。このピッチを見て、本当に将来性があると思ったら、誰でもセールでトークンを買えてしまいますからね。

この度発表されたプロジェクトは、下記の6つとゲスト出演の CEDEX です。

個人的に特に興味を引かれたものを紹介します。

FIC


https://ficnetwork.com/

こちらは超巨大な債券市場にフォーカスした FIC network のビジネスプラン。
今巷で発行されているトークンはどちらかというと株式調達に似ているものが多い気がしますが、この FIC network を使うと、企業が自前で社債を発行し、グローバルマーケットでそれを売ることが出来るようになるという代物でした。

各企業が合法的に発行した債券をブロックチェーン技術を使って、より早く便利に売買出来るようなネットワークを築くというのが野望のようです。
出資ではなく融資の方が向いている事業も多々有ると思いますので、そういった資金調達がよりスムーズに行えるようになるというのは素晴らしいことだと思いました。

法令遵守や債権者をどう保護するかなど、懸念事項は有りますが、実際に CEO の方に話を聞いてみた所、それなりの策が有るようです。

UpToken by CoinMe


https://uptoken.org/

一言で言うと、仮想通貨ATM事業です。シンプルですが、分かりやすくていいですね。 😀
すでに各国で数十台のレベルで導入されているらしく、あまりリテラシーが高くないが仮想通貨を手に入れたいユーザをターゲットにしているようです。

実際、近所のATMで換金出来るのであれば、 Bitcoin を買いたいという人はそれなりに多くいそうですし、仮想通貨が広く社会に普及した暁にはかなりの需要が見込まれるかも知れません。

ただし、このトークンの権利としては、1%のキャッシュバックを得たり取引手数料を安くできたりというようなもので、このトークンを買えるような人がATMを使うのかという疑問が正直残ります。仮想通貨には紙幣を引き出すというような概念は無いわけですし。

OPIRIA


https://www.opiria.com/

OPIRIA は個人情報を企業に提供する代わりに、トークンを受け取れるというプロジェクトです。

個人情報の秘匿に対する意識が高まりつつある中、一方の企業はますますそれが欲っするようになっているという課題に対して、むしろ割りきってユーザが自分の意思で個人情報を企業に売れば良いのではというようなコンセプトのプラットフォームを作ろうとしています。

過去に、ユーザ主導で企業に対する個人情報の開示を管理するというようなサービスの開発に携わっておりましたが、どのようにしてユーザにそのプラットフォームに個人情報を入力してもらうかという点が難しい課題でしたが、このコンセプトですと、ユーザにとっては個人情報の提供の対価として換金可能なトークンを得られることになるため、強烈なインセンティブとなり得ます。

CEO に確認してみた所、ユーザの承諾なく企業に個人情報が公開されることは無いようです。その辺りが少し安心ですね。

その他も面白いプロジェクトが盛り沢山

電力のトークン化



https://restartenergy.ro/

ボーダレス医療アドバイス



https://joinwell.io/

規格化ダイヤモンドの取引プラットフォーム


https://cedex.com/

世界中の個人投資家へ事業プレゼンをするという衝撃と感動

日本人によって行われた ICO である OmiseGo の長谷川さんも、 ALIS の安さんも仰っていましたが、 ICO の成功にはプロジェクトを支援するコミュニティの存在が不可欠です。

ある程度厳密なビジネスプランの作成が求められる従来の資金調達と比べて、クラウドファンディングの場合はいかにビジョンに共感して事業を応援してくれるファン(個人投資家)を集めるかというのがトークンセールの成功と相関性があるように思います。 Starbase のトークンセールの一連のプロセスに携わって得られた個人的な感覚としても相違ありません。

ファンを作るためには、キレイな LP と広告だけではきっと足りないでしょう。
コンテンツを作って発信し、色々な人と会い、ピッチをし、コミュニティのメンバー数とエンゲージメントを高めつつ、セールを行うのが王道的な ICO であると考えています。

今回来日された企業の皆さんはそれを国境を超えて行い、実際にされたわけです。
特に感動したのは、ピッチの資料をきちんと日本語に翻訳してプレゼンされた企業がいたことです。顧客目線ならぬ投資家目線で考えていることが感じられました。

繰り返しますが、このピッチは普通の個人投資家へ向けて行われたもので、投資に値すると思ったら誰でもセールでトークンを買えます。実際に、全プロジェクトがトークンセール中か近々セールを控えているプロジェクトでした。

ビッグな夢はビッグなコミュニティと叶える

ビッグな夢を叶えるには、お金やチームだけでは足りず、アンバサダーとなってくれるコミュニティも必要になって来ます。

従来であれば、その企業のプロダクトやサービスにお金を払う側であったコミュニティが、出資という観点でもその企業の成長を応援できる。そして、企業はトークンの価値向上という方法でコミュニティに還元する。

Kickstarter のようなリワード型のクラウドファンディングでも成し得なかった新たな文化がここに誕生しました。ICO は資金調達というソリューションに収まらない、新規事業創生のためのエコシステムと言えるのかも知れません。


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http://staycreative.jp/contact-me/

山中 悠

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